拝礼供養塔(松戸市二十世紀が丘萩町)
2021年2月26日号 第632号
松戸に数多く残されている江戸時代の石塔・石仏。その一つ、拝礼供養塔が二十世紀が丘のいちご公園にあります。江戸時代も後期になると、庶民の間で巡礼の旅が大流行。無事に完遂した暁には供養塔を建て、地元の人々もそれに参拝してご利益にあずかるということがされていました。
さて、こちらの塔には、願主として大橋村の根本市郎左エ門さん、先達の松戸伊左エ門さん、同行者に根本市兵エさん、宮山忠左エ門さん、青木利右エ門さん(日暮村)の総勢5人で巡拝したことが記されています。参拝先は、山形県鶴岡市の月山・湯殿山・羽黒山の出羽三山。そして、西国33所(近畿2府4県と岐阜県)、坂東33所(関東1都6県)、秩父34所の、合わせて百観音巡り。千葉県一つとっても、館山もあれば銚子もありの、端から端への広範さです。いずれも当時の人気参拝スポットとはいえ、これを全て周る…一体、どんな道中だったのでしょう。
塔の台座には地名「東大は・北金ケ作・南市?・西松戸」の刻字もあったそうで(現況は確認不能)、いちご公園が大橋村の村境付近だったことから、一面畑の中の辻に、道標も兼ねて設置されていたのではないかと思われます。いつの間にか、役目を忘れられてしまった拝礼供養塔。ほんの170年程前の現在とは世界のまるで違う巡礼の旅の記録です。お近くにおいでの時には、ぜひ探してみてください。
(たい子)
◎参考資料/松戸市石造物遺産(万葉舎)/大江戸今昔めぐり(地図アプリ)
※所在地/松戸市二十世紀が丘萩町38 いちご公園内
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