平戸弁天(いぼ弁天)(松戸市大金平)
2024年7月19日号 第714号
江戸時代の中頃のことです。お逢という評判の娘があったそうですが、医者にも直せないイボが目の下にあり、それを悩むあまり病気になってしまったといいます。案じた母親が牛頭天王を祀る八坂神社で願掛けしたところ、弁天様に頼むようにとの夢のお告げがあったそうです。そこで、坂下の弁天祠に日参し、その近くで湧き出る清水でイボを洗うようにしたところ、日に日にイボは小さくなり、ついにはなくなったといいます。その御礼として建立されたのが平戸弁天、通称「いぼ弁天」だそうです。残念ながら、現在その湧き水はありません。新坂川を開削した際に枯れてしまったようです。
このお逢の父親というのが、小金町にあった水戸家専用の本陣、いわゆる「水戸御殿」を任されていた日暮玄蕃です。その繁栄と長者ぶりは人もうらやむほどであり、妬みや嫉みも少なからず買っていたらしく、撞くだけで栄耀栄華が望み通りになるとされる「無間の鐘」を鳴らしたのだと陰口されていたようです。もしかすると、お逢はそんな父親のとばっちりを食ったのかもしれません。そもそもイボは、患部を清潔に保つだけでは根治できません。それが洗うだけでなくなったのは、弁天様の加護により呪いのようなものが取り除かれたのではないかとも思えるのです。ちなみに、現世の栄耀栄華を得られる代わりに、死ねば無間地獄に落ちると言われた、いわくつきの「無間の鐘」ですが、今は古井戸の底です。阿波々神社(静岡)にその「無間の井戸」が残されています。 (かつ)
※参考図書/「松戸史談」「松戸市史」「天狗の研究」
◎所在地/松戸市大金平3丁目
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