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引退間近の西武レッドアロー号に乗車&安比奈廃線 探訪の旅

2025年9月19日 第742号

 秩父地方での取材帰りに、いく度か利用した西武特急「レッドアロー号」。歩き疲れた後、リクライニングシートに身を沈め、お酒を片手に過ごす時間は格別でした。しかし今年3月、「2026年をもって、レッドアロー号を廃止する」と西武鉄道が告知したのです。そこで今回は、レッドアロー「小江戸」号に乗って川越を訪れ、あわせて2017年に廃止された西武安比奈(あひな)線の廃線探訪を紹介します。

 西武新宿駅は、JR新宿駅からやや離れた北方に位置し、他社線との乗り換えが非常に不便。記者は都営新宿線の新宿三丁目駅から地下道を通ってアクセスしましたが、思った以上に乗り換えに時間がかかるなと感じました。それでも駅舎は西武鉄道の主要駅として立派です。今回乗車するレッドアロー「小江戸」号は、この駅から発車し、高田馬場、東村山、所沢、狭山市と停車し、本川越駅までは乗車時間45分。実は地図を見ると、西武新宿線で川越に向かうルートはあきらかに遠回りで、JR埼京線や池袋から東武東上線を利用するほうが便利なんですよね。されど特急ならではのふかふかなシートと静かな車内は魅力です。ちなみに現在のレッドアローは2代目で、ニューレッドアローと呼ばれる10000系車両を使用し、7両編成のすべてが指定席。乗車するには乗車券のほかに特急券600円が必要で、西武新宿駅の専用窓口で購入できます。

レッドアロー「小江戸」号。

 小江戸号は観光列車的な位置づけで、休日は混雑するだろうと思いきや、土曜日10時台の乗車でさえ空席が目立ちました。他社線との乗換駅である高田馬場駅での乗客もわずかで、この状況だと確かに利益を得るのは厳しいでしょう。都心に近い区間では列車の運行本数が多いためか速度は控えめ。ですが駅をどんどん通過するため、特急利用ならではのお得感を得られます。そして鉄道旅は、やはりクロスシートですよ。大きな窓もいいですね。所沢駅を過ぎるとようやくスピードアップし、車窓越しには、郊外らしい緑豊かな風景が見られます。そして、あっという間に本川越駅に到着。正直物足りなさを感じましたが、廃止前に名車に乗れて大満足です。記者はこの後、御朱印目当てに駅からさほど離れていない喜多院や川越八幡宮を訪れましたが、川越観光は、あくまでもおまけなんですよね。今回の目的は「レッドアローに乗ること」と、もう1つは「西武安比奈線の廃線探訪」です。安比奈線とは、入間川の砂利を運搬していた貨物線で、2017年に廃止になりました。でも実際は1963年に休止され、その間一度も車両が走ることはなかった驚きの路線なのです!

所沢駅を過ぎるとスピードアップ!

 本川越駅から普通列車で隣の南大塚駅に移動します。本川越駅に比べると閑散とした駅ですが、駅前にコンビニはあります。ゴールの安比奈駅跡まではそこそこの距離を歩くため、ここで飲み物を購入してください。住宅地を抜けると自動販売機が見当たらないので要注意ですよ。さて、北口を出て駅構内に目を向けると広いスペースと、本川越方面には左手へカーブする敷地が見えますが、それが安比奈線の廃線跡です。踏切の跡でしょう、道路には線路が埋まっている様子が見られ、敷地内には錆びた線路が束ねて放置されていました。ちなみに敷地は西武鉄道の管理地だから絶対に立ち入り禁止ですよ!

駅前の踏切跡。

 廃線跡をたどるにはスマホの地図アプリが大変便利。安比奈線は表示されませんが、地図を拡大すると住宅地内に妙に細長い空き地が続くのが分かり、航空画像に切り替えれば廃線跡をより分かりやすく確認できますよ。南大塚駅を出た安比奈線は、まず左にカーブして国道16号にぶつかります。現在は4車線の道路ですが、安比奈線が現役のころは、幅が狭かったのでしょう、踏切で通過した痕跡が見られます。どうやら終点の安比奈駅までは、すべて踏切で通過し、立体区間はなかったようですね。国道を過ぎた先は、入間川に向かって線路は西へまっすぐ延びていました。

国道16号に残る線路。
住宅地を貫く廃線跡。
自然と一体化する場所もある。

 その後、スマホの地図アプリを頼りに次々と踏切跡を発見。やがて住宅街を抜けて、のどかな田園地帯に出ます。新河岸川もこの付近では細い流れ。廃線跡は緑におおわれ、もはや自然と一体化してる場所もありますが、痕跡は分かります。しかし突如、森に行く手を遮られます。「ここは迂回するしかないだろう」と半ばあきらめましたが、物流倉庫の裏手を通る小道を発見。どうやら森の側に近づけそうです。舗装路ですが誰も通らないと分かる悪路で背の高い雑草に行く手を阻まれますが、頑張って進んでいくと、なんと横目に線路を発見!敷地に入るのは厳禁なため、遠目から廃線跡を眺めました。多分、森の中で撤去が難しかったのか、当時のままの姿でしょう。さらに小道を進むと快適な道路に出られるのですが、そこで鉄橋を発見しました。実はこの付近、2009年に放送されたテレビドラマのロケ地として使われ、廃線跡を散策路として歩けた時期もあったそうです。鉄橋の先、廃線跡は左にカーブし、八潮大橋の付近を通過します。時計塔が立つ橋の上からは、線路を見つけることができますよ。

森の中の線路を発見!
テレビドラマの舞台にもなった鉄橋跡。
モトクロス練習場の側に残る線路。

 安比奈駅跡に向かうため、入間川の河川敷に降りる道を見つけるのに苦労しました。八潮大橋交差点を南下すると、砂利を運んだダンプトラックが頻繁に出入りする脇道を進んでください。さらに右手に進むとモトクロスの練習場にたどりつきます。そこにも線路が残っていました。しかも木の枝によって鉄路が曲がっているという……50年以上休止だった長い歴史を感じます。ここまでくれば、終点の安比奈駅はもうすぐ!地図アプリを頼りに猛暑の中、気力を振り絞って安比奈駅跡にたどり着きましたが、痕跡といえばコンクリートの構造物が1つ残るのみで、そのほか鉄道の遺構は何も見つけられませんでした。それでも大満足です!

安比奈駅跡。

 炎天下の散策で体力を消耗した帰り道、八潮大橋交差点にて、この地域の名物「武蔵野うどん」が食べられるお店を見つけました。うどん・天ぷら・ご飯などが食べ放題で1050円というお得なプライスに大満足!その後、南大塚駅に戻り、所沢駅で西武池袋線に乗り換え、秋津駅(新秋津駅)経由で武蔵野線を利用し、自宅へ戻りました。(パイン)

名物「武蔵野うどん」を食べる。

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