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斜面林

2021年5月28日 第638号

松戸市と市川市は下総台地の西端にあたります。江戸川を渡れば東京都。ベッドタウンで、千葉県の中でも人口が多く、住宅が密集しているイメージがありますが、起伏のある地形で意外にも斜面林が所々に残されています。斜面林ってどんな所?

 

●道路や鉄道が突き抜ける斜面林

 国道六号線、外環道を始めとした幹線道路、JR線と私鉄を合わせて6路線の鉄道が貫く松戸市。場所によって高架を、地上を、地下を。斜面林にトンネルを掘ったり、削ったり…。失われた木々を再生する活動も行われています。

image photo

●矢切~栗山

平成三年(1991)、京成高砂駅から矢切方面への北総線が開通します。電車は江戸川を渡り、そのままの高さを保って高架から斜面林を貫くトンネルへ。外環道の千葉県区間が開通したのは、平成三〇年(2018)。三郷方面から松戸ICに向け、斜面林から地下道となります。高低差約十八メートル。江戸川と並行する帯状の斜面林は下総台地の西端です。上と下を結ぶ道は、九十段を越える急な階段や竹林を抜ける道、なだらかな坂道などそれぞれ個性的。台地からは都内のビル群、そして美しい夕景を臨むことができます。

栗山斜面林

●堀之内

 北総線北国分駅の近くから、外環道と並行する国道298号線へつながる道が開通しました。高台からまっすぐのびる下り坂は、眺めも良く壮観です。この道路は堀之内の斜面林を二分します。堀之内緑地と名付けられた林。ここを、横断する遊歩道が設けられています。近所で小さなハイキング。国道に向かって右側斜面の隣には堀之内貝塚の小高い台地が、左側斜面の中には権現原貝塚があり、この辺りが四千年も前の縄文時代から、人々が生活を営んでいたことがわかります。大昔の人が残したものと、現代が交わる所です。

堀之内緑地

●駅近にある斜面林

R常磐線と新京成線が通る松戸駅。多くの飲食店や商店が立ち並び、市役所や税務署、裁判所といった機関のある、松戸の中心地です。昼夜とも賑わいを見せる場所ですが、少し歩くだけで緑豊かな斜面林に行くことができます。

●相模台

駅の西側は坂川や江戸川が流れる低地、東側は起伏に富んだ地形をしています。東口から歩いて二分、大型の商業施設につき当たります。向こう側は高台。高低差はビルの五階分に相当します。目指すのは相模台公園。大型商業施設の前を右折して初めての信号の麓に上り階段があります。人がすれ違うことができる程度の、つづら折りの階段。すぐ下をバスや車がひっきりなしに通っているなんて嘘のような静けさです。たどり着いた先には、鉄棒やジャングルジムなど遊具のあるスペースが広がります。

相模台公園
相模台の斜面林

●岩瀬

大型商業施設を今度は左に。岩瀬は、胡録台で発見された平安時代の遺跡から「石世」と墨書きされた土器が見つかったことから、市内最古の地名とも言われています。駅周辺から国道六号線の高低差は、約十二メートルもあります。閑静な住宅地の中に、所々残された斜面林。ここにも斜面の上と下をつなぐ緩やかな石段がいくつか。生活通路でありながら、木々を渡る爽やかな風を感じる贅沢な空間。中には、ちょっと休める場所も。賑やかなエリアと、大幹線道路の間に、異次元の空間が広がっています。

岩瀬の斜面林

●水が湧き出る斜面林

地下水が地表に現れる湧水。地質や地形などの条件が整った山部と平地の境目や、台地の崖線などで多く見られます。かつては松戸やその近隣にも多く見られた湧水ですが、年々枯渇しつつあります。

●カンスケ井戸

その昔、飲み水や農業用水に使われていたというカンスケ井戸。今も豊かな水をたたえ、池には元気に泳ぐ鯉の姿も。流れ出る水が涼し気な音を奏でています。右手に池を見つつ進むと石段が見えてきます。
『井戸坂』と呼ばれ、昔の人々は湧水を汲んだ水桶を背負い、ここを通って丘の上に運んだのだとか。今は買い物袋を手にした近隣の人が行き来しています。斜面林を上る緩やかな石段は竹や木々に囲まれ、ちょっと別世界。上りき
るとそこには、切られ地蔵の本福寺や、本覚寺といった寺院のある閑静な場所にたどり着きます。

手前にカンスケ井戸がある

●羅漢の井

その昔、飲み水や農業用水に使われていたというカンスケ井戸。今も豊かな水をたたえ、池には元気に泳ぐ鯉の姿も。流れ出る水が涼し気な音を奏でています。右手に池を見つつ進むと石段が見えてきます。
『井戸坂』と呼ばれ、昔の人々は湧水を汲んだ水桶を背負い、ここを通って丘の上に運んだのだとか。今は買い物袋を手にした近隣の人が行き来しています。斜面林を上る緩やかな石段は竹や木々に囲まれ、ちょっと別世界。上りき
るとそこには、切られ地蔵の本福寺や、本覚寺といった寺院のある閑静な場所にたどり着きます。

手前にカンスケ井戸がある
image photo

初夏。木々から独特の香りがします。若葉の緑が少しずつ濃くなって、夏へと向かう林。日中、暑さを感じる日が増えてきました。木々は、涼やかな空気で私たちを癒してくれます。林を抜ける小道を行くと、聞こえるのは鳥のさえずり?虫の声?枝を踏む足音?お目当ての昆虫に会えるかな?若木は育っているかな?ちょっとリフレッシュする斜面林の散歩道、お家の近くでも見つけてみて下さい。  (ミイ)

※参考文献/松戸市緑の基本計画 松戸市都市整備本部 都市緑花担当部 みどりと花の課
松戸市HP
市川市HP

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