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歴史を伝えてくれる建物

2024年5月10日 第709号

 千葉県内には沢山の歴史を伝えてくれる建物があります。民間所有と公的機関に所属する物がありますが、今回はそれぞれの中から、公開されている建物を選んで訪問してきました。
 松戸市内には戸定邸を始めとして、和風建築が多い印象があるので、敢えて洋風の建物を探してみました。

広い敷地の中に佇んでいます
入り口に設置されたプレート

 京成市川真間駅近くのマンションが立ち並ぶ住宅街に、そこだけ時間を遡ったかのような静寂に包まれた異空間があります。この洋館は現当主のご祖父で、東京株式取引所の仲介人(現在の証券会社)社長の渡辺善十郎氏によって約百年前に建てられ、現在もコンサートホールとして使用されています。
 外観は名前の通り西洋風ですが、内部には床の間も付いた広い和室があり、また玄関前に設置された防火用水には、鶴と亀の彫刻まで刻まれています。そういった事等からも、贅が尽くされた建物であることがわかります。

防火用水の側面に刻まれていました
歴史を伝えています
玄関脇の防火用水には贅沢な彫刻がありました
落ち着いた雰囲気のコンサートホール

 ご当主の渡辺俊司さんに館内を案内していただきました。
 一階に入るとすぐに広い応接間があります。大理石の暖炉やシャンデリア(今は当時の物ではないそうです)が設えられています。現在はコンサートで訪れる方々の待合として使用されているそうです。
 二階への階段は、重厚な手すりがあり往時の豊かさが偲ばれます。二階は広い和室と小さめの洋室があります。この洋室には、フランスの古い映画に出てきそうな小物や電話機、手洗い等がさりげなくありました。タイムスリップをしたかのような感じを覚えたといえば、少し大げさでしょうか。
 館内を見せていただきながら、渡辺家の歴史を、市川近辺の歴史も含めて丁寧に教えていただきました。
 渡辺家の長い歴史の中で、特筆すべき事としては現天皇の伯母の夫である東久邇若宮(盛厚)王が、一時期の住まいとされていた事で、当時は宮様のいらっしゃるお住まいとして有名であり、門前には交番も設置されていたそうです。また渡辺家のご先祖はオリンピックにも参加されていたようで、それを通じても皇室とのご縁をお持ちのようで、往時の華やかさを感じる事ができました。
 登録有形文化財は市川近辺にも複数ありますが、内部を公開している所は少ないそうです。渡辺家内部は、ご当主のご都合がつけば、一般公開をしてくださるようです。詳しくは「西洋館倶楽部 渡辺家住宅」で検索をしてください。

今後開催予定の案内がありました
どなたが、いつ頃、どこに持って行かれたのでしょうか 想像は尽きません
重厚な階段
フランス映画に出てきそうです
壁にかけられたまま保存されています

 平成8年に文化財登録制度が誕生し、原則として建設後50年を経過したもののうち、国土の歴史的景観に寄与しているもの、造形の規範となっているもの、再現することが容易でないもの、を登録の基準としています。
 ご当主の渡辺さんは、国登録有形文化財全国所有者の会の副理事長をされていて、歴史的に価値の高い建物等の保存を推進されています。
 日本は木造建築が多く、火災や地震などの被害に遭う事も多い中で、現在まで維持されるには、多分莫大な費用を要すると思われます。そういった民間の方々のご努力によって、私達は歴史を今に伝えてくれる建物を見る事ができ、そして体感する事ができます。そして、その事によって世界の歴史をより身近に感じる事ができます。

ご当主の渡辺俊司さん
応接間にて 音楽に造詣が深くシャンソンがお好きだそうです

千葉県立房総のむら 成田市大竹1451

整備された広い敷地に、強い日差しを反射しながら、静かに佇んでいます

 房総のむらの正面入り口からは、奥まった所にあり、少し分かり難いのですが、広々とした敷地に佇んでいます。「房総のむら」の喧騒とはかけ離れ、静かに時が流れていました。訪問した日はとても良いお天気で、強い日差しが降り注ぎ、白い壁は光るように美しかったです。

入り口に設置されていました
上部は日の丸の赤でしょうか
光っているかのように見えました
ここには、どんな人が立たれたのでしょうか

 この正堂は1899年(明治32年)に、都内に講堂として建設されましたが、講堂が新築された為に、1937年(昭和12年)に現在の成田市の中学校に移築されました。以来講堂として使用されていましたが、講堂新築にともない1975年(昭和50年)に成田市から千葉県に寄贈されたそうです。
 外観はほぼ白一色に塗られ、所々は青く塗られています。初等科の講堂として優しい色使いが感じられます。また屋根の上には、白いレース状の物があり、避雷針ではないかと思いますが、可愛くておしゃれな印象があります。テラスを取り囲んでいる背の低い塀は、往時の小学生をイメージさせました。
 内部は一般公開されているので、入ってみました。平日で殆ど人がいなかったので、ゆっくり鑑賞することができました。
 木造でありながらも、広い空間が確保されています。内部の柱や床は、重厚感のある木材が使用されていて、長机や椅子が沢山置いてありました。机や椅子は今では珍しい木製で、木に囲まれているせいか、不思議と落ち着く空間でした。
 かつては、天皇家にゆかりのある方々が、場所は違うとはいえ、同じ空間内で過ごされたのだろうか、と想像は絶えませんでした。
 戦火も潜り抜けたであろう歴史的な建物が、千葉の地に保存されているのが、誇らしいとも思いました。
 詳しい内容は、千葉県のホームページでご確認ください。(まーちゃん)

この屋根の上の、レースのような物が可愛かったです
ここに沢山の人達が集ったのでしょう

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