2025年11月21日 第746号
多くの方に、点字は馴染みがないかもしれません。でも、近所の町角や家の中でだって、案外見つけられます。下の写真も、鉄道駅の券売機脇などにある、点字運賃表の一部です(1字1字を区切る赤枠は筆者が追加)。この謎のブツブツ(?)、当記事の半ばまで進めば読めてしまいますよ! 実は日本の点字の構造って合理的。初歩段階はやさしく身につくんです。
6つの点でワンセット、原則、母音は左上3点、子音は右下3点で表す


サイコロの6の目状に並ぶ6点が、点字ひと文字です。個々の点は便宜上、番号で呼ばれます。左上から下方へ、①の点、②の点、③の点。右上が④の点。以下⑤、⑥と続きます。どの点が突き出て、どの点が平坦かで、字を読み解くんですね。点字の連なりを読む順番は、左から右です。
日本語の点字は、ローマ字式で学びやすい! 母音(アイウエオ)は左上3点、①②④で表すのが基本です。「カ行」「サ行」等の子音は右下の3つ、③⑤⑥を使用。ただし「ヤ行」と「ワ行」は例外で、後ほど説明します。
全部は「め」、初めは「はじ」

最初にマ行のエ段、「め」を伝授。点が6つともあれば「め」です。この6点は視覚障害者の「目」。「全部は『め』」と記憶しましょう。子音の側だけ見るなら、右下が③も⑤も⑥も出ていれば「マ行」。母音の方は、左上①②④が全突出で「エ」です。
続いては、母音と子音、それぞれの「初め」も解説します。母音先頭の「ア」は端っこの①の点だけを、子音の1番めの「カ行」は、やはり隅っこの⑥のみを打ち出します。母音も子音も「初めは『はじ(端)』」と暗記しましょう。
「イ」は縦、「ウ」は横、「オ」は斜め

残りの母音はどんな並びでしょう? ①②が「イ」、①④が「ウ」です。「オ」は②④と配列。「『イ』は縦、『ウ』は横、『オ』は斜め」と、頭に刷り込みましょう。
ここまで来たら、先ほどの、駅にあった点字はもうわかります。図の通り「駅名」と、みごと解読できました。
たださすがに、点字を目で見ず指で触れて判読するのは困難。これって、視覚障害者のうち多くの方々も同じだそうですよ。指での感得に幼少時から慣れていない中途失明の方は特に、点字を読むのは難しく、音声サポート等を利用されたりするようです。

6つの子音は絵で覚える
子音は先ほど、カとマの行を習得したものの、まだ数多くありますね。そこで6種の子音を語呂合わせで覚える方法を大公開します。
子どもたちの絵にヘンな文を添えたもの‥‥ご覧ください。この「四ツ谷の、迫田五郎さんの子ら、皆サムエ派」の情景をイメージし唱えれば、読める点字はグッと増えるはず。
さて、ヤ行は④ですけれど、本来④の点って母音用のはずが、なぜ?それは、③⑤⑥だけの組み合わせでは、子音全部をまかなえないから。やむなく右上端の④の点で「ヤ行」を示すこととしたのです。そして母音は、形はそのまま保って、一番下まで押し下げます。
「わ」「を」(ワ行に該当)はそれぞれ「や」「よ」から④を除きます。つまり「ワ行」を示す点はなく、母音を押し下げて対処するんですね。
各子音などをまとめて図解しました。ご確認ください。

ほかの表記は?

「ん」や、小さな「っ」(促音)、長音記号の「ー」を、点字でどう表すかも図示しましょう。また「右にある点字は、濁音に変換」とか「右の点字は、かなじゃなくて数字」などと伝える符号も、一部ですが紹介します。
数字個々(1、2、3~)について、さらにはアルファベットや、「きゃ」「きゅ」といった拗音の表し方等々もお教えしたいところですが、紙面に限りがあり割愛します・涙。
ほかにも、点字特有の表記法があったり(例:おとうさんは⇒点字では⇒おとーさんわ)、文節ごとに1字分あける「分かち書き」ルールが厳密だったり……これらの解説は複雑になるので、初歩に限定した本特集では、省かせていただきます。
身近な点字から想像を拡げて、知識を深めよう


左の画像はわが家の洗濯機の操作部に浮き出た点字です。「スタート」がある一方「一時停止」は場所が十分なく、略されています。
続いては、地元のお店で買った缶ビール・缶チューハイ・缶カクテル・缶ハイボールの上からの写真で、点字はどれも「おさけ」です。アルコール飲料だよ、という注意喚起。日本酒の意味でなく、紛らわしいですね。チューハイやハイボールなど、個々に種類を記せばよさそうなものですが、それらを点字にすると「おさけ」より長くなって、入りきらないんです。
点字は大いに利用者の役に立ちますが、不便一掃とまではいきません。ここに挙げた「広いスペースを要し、時には省略されもする」のも、そんな一事例。興味をもって探っていくと、色いろと見えてきますね。
有意義な発見に満ちた場として、社会福祉法人・日本点字図書館はお勧めです。事前予約が必要ですが、案内つきで館内を見学できます。点字に加えて録音図書などの説明も、実地で受けられます。手続きをお取りの上、訪問なさってはいかがでしょうか。 (さっくん)

https://www.nittento.or.jp/index.html

















この記事へのコメントはありません。