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路線バスで行こう 松戸駅~東松戸病院

2023年8月4日 第691号

松戸駅東口から新京成バス『東松戸病院』行きに乗って、ショートトリップ!
どんなところに出合えるかな?

【戸定歴史館】

塀に張り付くバス停

 長い坂を上りきると、正面に茅葺門があります。門をくぐると、右手に戸定邸、左手に戸定歴史館、その奥には茶会や句会に利用される松雲亭、さらに庭園がひらけていました。戸定邸は一般に公開されている唯一の徳川家の住まい。建物は国の重要文化財、庭園は国の名勝となっています。ここを造ったのは、江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜の弟、徳川昭武。明治に入り、昭武はここに七万平米以上の土地を取得し、戸定邸を建設します。現在、規模は縮小されたものの、書院造の建物に和洋折衷の庭園は見ごたえがあり、東屋からの眺めも絶景。戸定歴史館には昭武の遺品が常設されており、企画展も開催しています。

【大橋坂下】

梨のデザインがかわいいバス停

 横断歩道を渡り住宅地の中をしばらく歩くと、大橋小学校の隣に二十世紀公園があります。一見普通の公園ですが、ここは松戸が誇るあるものが誕生した地。園内にその答えがあります。『天然記念物二十世紀梨原樹』。1888年、当時まだ小学生だった松戸覚之助氏が分家の石井氏宅のごみ溜めにあった梨の苗を育てたところ、甘くてみずみずしい梨が実をつけたのです。病気に弱く、収穫までに十年もかかった梨。二十世紀傑作の梨、ということで二十世紀梨という名となりました。原樹は1935年に天然記念物の指定を受けましたが、残念なことに戦災で傷つき終戦の二年後に枯れてしまいました。公園内には松戸氏を讃える石碑と、梨の木のオブジェがあります。

【大橋】

 バス停を降りて少し進むと、国分川が流れています。バス通りに架かる橋の名前が“大橋”。国分川は五香を源とし、途中、春木川などと合流・分流を繰り返して市川市へと流れていきます。源流部分は地下を、上流部はコンクリートの護岸の中を住宅地を縫うように流れていきます。大橋辺りの国分川は、緑が生い茂り、水がさらさらと流れる、小川のよう。コイが泳ぎ、カモやカワウ、コサギやアオサギなどの水鳥も見ることができます。大橋から川を少しさかのぼると、国分川水門があります。この辺りの川は“上の川”と“下の川”の二段になっていて、ちょっと不思議な光景。次々と表情を変える国分川を眺めつつ散策するのも良いかも。

大橋付近の国分川
国分川水門

【秋山駅】

 バスは秋山駅のロータリーに到着。マンションが立ち並び、スーパーやドラッグストア、100円ショップなどチェーン店の他、個人が営む洋食屋やカフェ、ケーキ店もあり、とても住みやすそうなところ。北総線は、1991年に京成高砂駅から新鎌ヶ谷駅間で開通。2000年には印旛日本医大駅まで延びました。その後成田スカイアクセス線が完成し、秋山駅からは一度乗り換えるだけで成田空港まで行くことができます。西へ向かうと、京成押上線、都営浅草線、さらには京急線に乗り入れており、都心や羽田空港へ直接行くことのできるとても便利な路線です。秋山駅は、京成高砂駅から4番目の駅。これからますます発展しそうな気配がします。

【スポーツパーク】

東部スポーツパーク

 バス停から徒歩3分のところにあるのが、東部スポーツパーク。体育館、テニスコート、野球場の他、25メートルプールと幼児用プールがあります。その他にも、遊具がある公園、アスレチックを楽しめるわんぱくランドも。また、会議室や和室も併設。スポーツで汗を流したり、今の季節はプールで思いっきり泳いだりと、体を動かせる場所となっています。さて、ここには煙突があるのですが、なぜでしょう。答えはこの施設は東部クリーンセンターを併設しているから。遊歩道もあって木陰も多いので、ウォーキングも楽しめそうですよ。
※施設の利用については、公式ホームページでご確認ください。

【住宅入り口】

甚左衛門の森

 高塚交差点。ここを直進すると“大町梨街道”。道沿いは梨園が多く、今の時期は街道沿いに直売所が立ち並ぶ道ですが、バスは交差点を右折します。曲がったすぐ先に珍しい名前のバス停がありました。『住宅入り口』。降りてみると、住宅が多く立ち並ぶところ、というよりも緑が豊かな場所です。少し戻って右に曲がり、しばらく行くと甚左衛門の森がありました。中に入ることはできませんが、ボランティアの方々がこの森の保全活動をしているようです。バス停に戻り、道路を渡ると立派なお屋敷があります。その塀沿いに古い庚申塚がありました。塀は庚申塚に合わせて立てられていて、とても大切にされていることがわかります。

【市立東松戸病院入り口】

 この土地ならではの珍しい看板を見つけました。『びゃくしん類植栽規制区域指定標識』。かいづかいぶき、いぶき、たまいぶき、くろいぶき、たちびゃくしん、みやまびゃくしん、はいびゃくしん、スカイロケット、ねず、はいねず、みやまねずは植えることも、保有することもいけないというのです。理由は、この地が梨の産地だから。びゃくしん類は、梨の病気『赤星病』を媒介するため、「赤星病防止条例」が定められており、ここでは規制されているのです。

【市立東松戸病院】

東松戸病院で待機するバス

 終点、東松戸病院に到着しました。自転車置き場のすぐ左に階段があります。両側は斜面林。緑に囲まれて空気がひんやりと感じます。降り切ると目の前にまた斜面林。いちかわ大野の森。こちらは中を散策できるようです。案内によると、戦前に植樹したスギとサワラの人工林が手入れをされずに放置され、それらが枯死した跡にイヌシデやムクノキなどの広葉樹が進入した針広混交林である旨が書かれています。現在は手入れが行き届いた気持ちの良い森となっています。

 いつも通勤や通学、買い物などで乗るバス。ちょっと他の停留所で降りてみてはいかが? (ミイ)

※参考文献/『松戸の歴史案内』 松下邦夫著 郷土史出版
 北総鉄道株式会社 HP

いちかわ大野の森

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