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石碑めぐり 258

八柱霊園に眠る 年末の第九の父 クロイツァー(松戸市田中新田)

2024年8月25号 第715号

 八柱霊園にお墓があり、日本人に多くの影響を与えたレオニード・クロイツァーをご紹介します。
 1884年ロシアで、ユダヤ系ドイツ人の両親から生まれたクロイツァーは、サンクトペテルブルク音楽院で、ピアノと作曲を、ドイツでは指揮を学びました。1921年から1933年までベルリン音楽大学の教授を務めており、1931年に初めて日本を訪れました。1933年に再来日し、近衛秀麿の誘いに応じ東京音楽学校(現:東京芸術大学)で教授となりました。ドイツでは1942年、ナチスによって国籍を剥奪され、無国籍となってしまいます。
 第二次大戦後の1947年12月、クロイツァー指揮の日本交響楽団が3回にわたって、ベートーベンの交響曲第九番を日比谷公会堂で演奏しました。敗戦の混乱期、焼け跡にはバラックや闇市が立ち並び、食糧不足や急激なインフレが起こっていました。「第九」は聴衆に勇気を与え、また楽団員の越年資金の確保にもなったことでしょう。いわゆる”年末の第九”が恒例化したのは、このクロイツァー指揮の「第九」がきっかけと考えられています。
 今年2月に亡くなった小澤征爾さんは、日比谷公会堂で彼がピアノを弾きながら「皇帝」を指揮したのを見て、指揮者になる決心をしたそうです。
 こうして日本の音楽文化に大きな影響を与え続けているクロイツァーは、彼の元門下生でのちに妻となった豊子と共に、八柱霊園に眠っています。  (タケ)

 

※八柱霊園(2区1種10側13番)

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