2025年6月6日 第735号
通勤や通学、買物客などでいつも賑わう松戸駅。
駅の利用のみだったり、飲食を楽しんだり、目的地に行くだけで、通り過ぎてしまうところですが、駅周辺はいろいろな場所があります。近場で散策してみませんか?
◎公共機関

東口を出て左へ。飲食店や病院を通り抜けながら小高い丘を上ると、松戸市役所があります。市の行政を司る中枢。建物は本館と新館、別館、議会棟に分かれていて、売店や銀行、休憩室もあります。意外と知られていないのは、この辺りは松戸貝層と呼ばれ、貝化石が多く確認されていること。太古の昔は海だったのですね。
東口を出て、今度は右へ。戸定通りを左に曲がって急な坂を上りきった上にあるのが、千葉地方法務局松戸支局です。法務局とは不動産登記などを行う役所で、千葉県には松戸を含め、10か所の支局があります。法務局の隣にあるのが、千葉地方裁判所松戸支部、松戸簡易裁判所、千葉家庭裁判所松戸支部です。裁判所は、法律的な紛争を解決したり、犯罪を犯した疑いがある人に対し、有罪か無罪かを判断したりするところです。松戸駅の近くにはこのような行政、司法の重要な施設があるのです。
◎神社仏閣

松戸駅の周辺には、驚くほど多くの神社やお寺があります。松戸市役所の向かいにあるのが、小根本神明神社。市役所西側の岩山稲荷は赤い鳥居が目印です。その北側にある金山神社は小高い丘の上にあって、ちょっと登山の気分が味わえる神社です。常磐線の跨線橋を渡っている時からその雰囲気を醸し出しています。その跨線橋のすぐそばには、真言宗の吉祥寺。常磐線の線路沿いですが、静かなお寺です。同じく線路のすぐそばにあるのは日蓮宗のお寺、大正寺。そのすぐ近く、松戸神社の御祭神は日本武尊。坂川にかかる赤い橋が美しく、桜の季節は殊に美しさを増します。同じく坂川沿いにある松龍寺には参道に擬宝珠の松龍橋が架かります。幕末の剣豪、千葉周作が入門した浅利道場が、バス通り沿いにある宝光院と善照寺の間にあったと言います。宝光院の四国霊場八十八か所は実に壮観。その並び、真宗大谷派の西連寺の本堂は、嘉永四年(1851)の建築です。住宅地の中にひっそりとたたずむのは根本天満宮。こじんまりとした天神様です。松戸は歴史のある街なのですね。

◎歴史

部屋数23。この建物は戸定邸です。建てられたのは明治期。家主の徳川昭武は、水戸藩主・斉昭の18男。兄は徳川慶喜です。現在、大阪で万国博覧会が開催されていますが、昭武が将軍名代として派遣されたのは、1867年のパリ万博。この時、フランス以外にも5か国を歴訪し、各国と交流を深めます。29歳の時に隠居。戸定邸は、上質のスギ材をふんだんに用い、欄間などに葵の葉を施すなど凝った作りとなっています。南側の庭園は西洋技法による芝生が広がり、江戸川や東京の遠景を望むことができます。
松戸駅東口よりイトーヨーカ堂へ。5階より松戸中央公園へ出ることができます。この公園の正門門柱は、工兵の技術研修教育のために大正8年(1919)に開校、昭和20年(1945)年に閉校した旧陸軍工兵学校の正門門柱です。警備のための歩哨哨舎とともに、松戸市指定の文化財になっています。
川の歴史をひも解いてみましょう。たびたび大洪水を引き起こしていた江戸川。明治政府がオランダ人技師に調査を依頼したところ、湾曲した松戸付近の工事が必要とされ、着工します。建設省直轄工事発祥の地となったのです。銚子で水揚げされた鮮魚は、江戸でも売られていました。布佐(我孫子市)より鮮魚街道で陸路運ばれた魚は、納屋河岸で再び水路で江戸へ向かいました。川があれば橋もある。小山のバス通りに架かる小山樋門は、千葉県で現存するレンガ造りの水門で最も古く、土木学会推奨土木遺産に登録されています。

◎自然

松戸駅西口をまっすぐ進むと、江戸川に突き当たります。ふれあい松戸川は、水質を保つために坂川の水を江戸川の下流へ流すバイパス川で、人工の川でありながら自然な風景を醸し出しています。近くには多様な植物や虫が生息し、魚も泳ぐ、生物の憩いの場となっています。坂川もまた、松戸の自然に欠かせない景色。その昔は汚い川だった坂川も、今はすっかりきれいになり、魚や水鳥が集う川となりました。特に春雨橋周辺から小山辺りは、川辺に植物や花も多く、河津桜が咲くころには多くの人で賑わいます。写真が趣味だった徳川昭武が撮った坂川の風景も残されています。
松戸駅の西側が水の街なのに対し、東側は起伏のある山の街です。相模台公園は岩瀬の台地に位置する公園。桜がきれいな公園ですが、特筆するのは公園にまでの道。斜面林を縫うような階段を上る途中で様々な木々に出会え、さながら森林浴をしているようです。このような斜面林の細道は、駅東側に複数あります。松戸中央公園は、駅から見るとイトーヨーカ堂のちょうど裏側にあたる広い公園。テニスコートや子どもたちが遊ぶ遊具がありますが、特に目を引くのは巨樹の数。大きく育った木々は、私たちの生活を静かに見守ってくれています。 (ミイ)


◎参考文献/
千葉地方法務局HP 裁判所HP 松戸市HP

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