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特集「音訳ボランティア」松戸朗読奉仕会の活動を中心に

2026年3月13日 第753号

 印刷物等の文字を声にかえ、時には図表、写真まで音声化……それが「音訳」です。目が見えない・見えにくい人や、文字の読み取りが困難な人など、聴覚以外から情報を得るのが難しい方々へ向けて行われます。市民生活に不可欠なニュースから、地元の話題や多岐にわたる書籍まで音訳する作業は、どんな風に進められているのでしょう?

社会福祉法人・日本点字図書館 https://www.nittento.or.jp/

 「得たい情報を得られる」ことは、障害などの有無を問わず誰もが望む権利です。音訳はそれを保障する営み。全国規模で音訳関連の事業を運営するのが社会福祉法人・日本点字図書館です。録音図書(や点字図書)の製作、貸し出しから、音声データをインターネット配信する「サピエ」というシステムの管理等まで、重要な役割を担います。
 一方で、地元に密着した音訳グループが各地にあります。中でも松戸朗読奉仕会は1972年と早期に発足。54年もの歴史を重ねてきました。
 ボランティア団体・松戸朗読奉仕会は現在、76名が所属、活動拠点は松戸市健康福祉会館(ふれあい22)3階、障害者福祉センターです。1980年代に早くも『漱石全集』全35巻を音声化し、全国紙にも取材されました。音訳するのは新旧小説やエッセー、市の刊行物など多種、視覚障害者等の希望者に無料提供しています。
 『はーとtoハート!』も好評、表題にも想いを込めた独自のCDです。市内の各種情報、本の案内、一部の雑誌・新聞の記事、その他を多彩に収録。視覚障害者等のリスナーに送っています。さらに、依頼に応じ取扱説明書や参考書の類からレシピ本等まで、肉声で吹き込んでお手元へ!

『声の広報まつど』最新号を、松戸朗読奉仕会の先輩に指導を受けながら録音(奥のカーテンで音の共鳴を抑えています)

 会の創設時から脈々と続く根幹の活動が、視覚障害者等への『声の広報まつど』の提供です。1972年8月に初めて松戸市発行の『広報まつど』を録音して配布し、それ以後も全号を音訳。「情報が不足しがちなので、ありがたい」「広報聞いたよ、よかったよ」といった感想が、会員の励みとなっています。
 広報の原稿は松戸市側での校正完了後、印刷に移る前に当会へ。届いたら担当スタッフで共有し、内容を把握します。読み方、イントネーションを確認し合い、載っている写真、イラストやグラフ等々までも(!)どう説明するか検討します。その後パソコンを用いて録音・編集し、仕上がった音声データをCDにコピー。専用の袋に封入して、各リスナーへ、広報発行日に到着するよう郵送します。
 実は2010年まで、広報収載の原稿は印刷・発行されるまでもらえず、刊行物を入手後の録音でした。紙の広報より遅れてしまうのを最小限に抑えられるよう、新聞販売店に頼み込んで、半日早く『広報まつど』を受け取るなど、会員各自が工夫し奮闘。でも、どうしたって一部の情報は過去のものになってしまいます。
 改善へ向け松戸市と話し合い、長年の貢献で得た信頼もあって、原稿受け取りを前倒しし、早期配送を実現させたのです。

図書の各ページの文、写真、絵等だけでなく、表紙の文字や見た目も声で説明…もしもこんな表紙なら、あなたはどう伝えますか?
音訳CDは専用の袋で郵送、お隣で活動する松戸点訳会さんが、ケースなどに貼る点字シールを打ってくださいます

 進化への熱意こそ、当会の伝統であり強みなのでしょう。これまでも、テープからCDへ、さらにデジタル全盛へ、という時代の激変に対処してきました。
 機器に疎く昭和が息づく筆者から見て、会員の多くは同年代かちょっと歳上。入会時点でパソコンはほぼ未体験だった方も少なくありません。でも、IT知識の豊富な会員が他のメンバーに教え広め、適応してきたのです。
 2019年の著作権法改正時には機を逃さず申請し、文化庁の登録団体となって、個別に許可を取らず書籍等を音訳できるようになりました。さらに吉事は連鎖。『声の広報まつど』が2020年から松戸市のWebページに公開され、多くの人が容易に(現在はスマホでも)聴けるように!2025年からは当会で録音した本のデータを国立国会図書館へ提供。視覚障害者等の登録者はサピエ図書館からも利用できます。
 デジタル化の導入や会員それぞれのPCスキルの高まりは、移動も集会も難しかった東日本大震災直後やコロナ禍の時を始め、折々で大いに役立ちました。

ふれあい22フェスタ(松戸市の催し)にも当会は出展、来場者は試聴体験など、多彩に楽しめます
自宅録音も増えていますが、防音のため夏も冬もエアコンは切るなど苦労多々

 利用者との「本音」のコミュニケーションも心がけています。会員は普段から、楽しんでもらえ助けになるよう努めた上で、さらなる要望を探っています。利用する側のみなさんも、喜びの感想を語りもし、いい意味で遠慮なく、改めてほしい点を指摘もするのです。
 『声の広報まつど』のお届けを紙の広報の発行と同日にまで早めた先述のケースだって、本音のやりとりが端緒でした。たとえば30周年(2002年)の記念誌に載った、リスナーの声には「行事、催し物等参加したいと思ってもすでに時期が遅い場合がある」などとあります。お祝いの紙面なのに、苦言を具体的に載せるんですね(笑)。それをポジティブに問題解決や向上につなげようとする、会員のみなさんの意気を感じます。

 読書が困難な方を始め障害者手帳をお持ちの方等と、松戸朗読奉仕会のメンバーと、同じ場所で接する催しが「朗読をきくかい」です。松戸市の障害者福祉センター主催で月に一度開かれます。会員が短編小説や随筆の音読を披露し、感想や意見を伺ったりもします。
 また「対面朗読」にも応じ、ご希望の本などを読みます。依頼者の自宅か東松戸地域館(市立図書館)ハンディキャップサービスルームに、会員が訪問し実施します。
 ただ、対面での交流はコロナ禍を経て後退気味。その再生と合わせ、新世代のリスナーにも便利に利用してもらうことが、現状の課題といえます。
 最近はデジタル通信手段が発達し、目が見えなかったりしても独力で情報を集めやすくなりました。そうして世の中がアップデートされる中、各会員は「松戸朗読奉仕会が、社会に有意義に寄与し続けていくには?」と熟慮。次の新しい扉を開こうと努力しています。  (さっくん)

「朗読をきくかい」では時に数人で一作品を読むことも
会員が持参した季節の花も「朗読をきくかい」の会場に! 花の取り合わせや様子を言葉で伝え、朗読の合間に香りを楽しんでいただいたりも……
会員募集は、育成に時間を要するため4年に1度ほど実施し、今後は2028年ごろ募る見込みです。希望者はまず当会主催の『音訳ボランティア養成講座』を受講。詳細は広報まつど・まつど社協だより等で、募集時に案内予定です。

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