特集記事

東京の歴史的建物

2025年8月22日 第740号

 歴史的な建物といえば、まず神社仏閣が想起されるかもしれませんが、東京にはそれら以外にも、大切に維持管理され、更には近現代の歴史を学ぶことができる建物が沢山あります。それらは、東京が首都であるからこそ存在しているのではないかと思います。その東京の近隣県に住む者にとっては、距離的な意味で訪問し易いという恩恵があるので、歴史を振り返りながら、それらを巡ってきました。

洋館はジョサイア・コンドルによって設計されました
金唐革紙の壁紙と寄木の床

 桜が満開の頃に訪問しました。上野公園近くに立地していますが、その公園の賑わいとは隔絶され、とても静かな佇まいでした。このお屋敷は三菱の創設者岩崎彌太郎の長男で三菱第三代社長久彌の本邸として1896年に建造されました。建設時には約20棟の建物がありましたが、今は3棟となっています。戦争を経て、1953年に国有財産となり、1961年に一部が国の重要文化財に指定され、1969年と1999年に追加指定があり、現在に至っています。
 階段や天井にまで贅が尽くされ、金唐革紙で装飾された壁紙、更には、その床は寄木で大胆な模様が施されています。貴重な金唐革紙の壁紙は、洋館2階の2部屋と撞球室の3ヵ所で復元されています。
 久彌氏は戦後、千葉県富里の末廣農場に居を移されたので、少し身近に感じることができました。

満開の桜と旧岩崎邸全景
このレンガの塀も重要文化財に指定されています
玄関の階段エントランスの天井には影による装飾が見えます

 長い坂道を上りきった所に、緑に囲まれた瀟洒な邸宅がありました。玄関には大理石の立派な階段がしつらえてあり、往時の豊かさが感じられます。鳩山家は四世代に亘って、日本の近代政治の中心にあったので、この建物もその変遷を見続けたことになります。約百年前に建築され、約30年前に大改修が施されています。玄関エントランスの天井には影による装飾を潜ませる等、随所にその知性と品性の高さが漂っています。庭園のバラは有名ですが、それ以外にも噴水の周りに集う鳩の彫像や、外壁にひっそりと羽ばたく鳩の像等、随所に一種の遊び心も感じました。

バラとつつじに彩られるお邸
鳩が見守っているかのようです
大広間は圧巻です
教会への長い坂道

 鳩山会館から徒歩10分程、長い坂道を上り切った所に、大きな教会がありました。
 「古い建物」ではないのですが、気になったので立ち寄ってみました。神聖な雰囲気の中、大きなパイプオルガンの音色が低く流れていました。帰りかけた時、ふと振り向くとピエタ像が厳かな雰囲気の中に、佇んでいました。かつてバチカンを訪れた時に感動と共に見上げたその像と同じピエタ像を、東京でも見られた事に感動しました。
 長い坂道を上ったご褒美のように思いました。

個性的な外観です
エレベーターもありますが、美しい階段が目を引きます

 渋谷の高級住宅地・松濤に立地する美術館です。最寄り駅から少し迷いながら辿り着きました。この美術館は1981年に開館したので、歴史的とは言えないのですが、その個性的な外観や展示内容に興味があり訪問しました。その時は、「セーヴルフランス宮廷の磁器」の展示があり、その展示品の精緻な美しさに魅了されましたが、建物としても魅力的でした。
 外壁には少しピンク色がかった花こう岩が使用され、張り出した屋根が個性的です。一階ロビー奥にあるやや楕円の窓は、その外の植栽を絵画のように見せる仕掛けになっていました。大規模な美術館では見られないような、建物自体も魅せる造りのように感じました。
 現在は、前述の展示は終了しておりますので、最新展示につきましては、公式ホームページのご確認をお願いいたします。

建物の中央に円形の池を造り、その上に橋が渡されていました
池の中央に渡された橋からも、ギャラリーの窓越しに植栽が見えました
お屋敷が立ち並ぶ中、豊かな緑と茶色の建物が目立っていました

 渋谷区松濤のお屋敷街の中に立つ、堅牢な雰囲気の美術館です。1987年に開館されているので建物としては歴史的ではありませんが、その収蔵されている鑑賞用陶磁器が歴史的な価値が高いので、訪問しました。その時は「西洋帰りのIMARI展・柿右衛門・金襴手・染付・」が開催されていました。(現在の開催内容は、戸栗美術館公式ホームページでご確認下さい)
 展示品の大皿の中央にはオランダ東インド会社の略称が記され、江戸時代から伊万里焼きが西欧で高い評価を得ていたのを感じることができました。
 販売されていたポストカードには、柿右衛門の赤やワインカップが印刷されていました。エントランスからは、立派な庭が眺められ、大きな甕やその他の焼き物が配置されていました。

都会の真ん中の豊かな緑は、目にも心にも優しく感じられます
赤が目立つポストカードを購入しました
この大皿一枚だけでも、往年の日本文化の豊かさを感じられます

 これらの建物は以前から興味がありましたが、なかなかその機会に恵まれませんでしたが、この掲載を機に訪問しました。そして「百聞は一見に如かず」を実感しました。その場に立つことで、写真や文字では表現しきれない歴史の重みを実感することが出来ました。例えば椅子の背あての布が薄く色落ちしているのを見て、かつてその場所で生活されていた方々についての想像が膨らんでいきました。
 全ての写真は、当該施設の許可を得て記者が撮影したものです。詳しい内容につきましては、それぞれの公式ホームページでご確認をお願いいたします。 (まーちゃん)

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