青面金剛像庚申塔(我孫子市下ケ戸)
2025年11月7号 第745号

八幡神社内にある1719(享保4)年造立の塔です。主役は、邪鬼を踏み、6つの腕に法輪や弓、矢などを持った青面金剛(しょうめんこんごう)。庚申講の本尊です。
庚申信仰は、道教や神道、仏教等と、民間に信心され継承されてきた習俗とが混淆したもので、江戸時代に隆盛を極めます。60日ごとに廻ってくる庚申(かのえさる/こうしん)の日には、徹夜をしました。なぜなら当夜、眠った人は、自分の行状を天帝に告げられ、悪行が暴かれようものなら寿命が縮むとされたから。でも、身を慎んで過ごす行事はいつしか、近隣で集って夜通し飲食・歓談する楽しい催しにヘン~シン(笑)したみたいです。
あらためて塔を見てみましょう(写真)。下部中央に、左から言わざる・見ざる・聞かざるの三猿が並び、その両側で夜叉(鬼神)が合掌。各夜叉の上には、同じく二人の童子が佇みます(三猿、そして夜叉や童子は、青面金剛とセットで扱われることの多いキャラクターです)。
筆者は特に、脇役ながら個性の違いを繊細に刻み分けられた左右の夜叉と……何より、悪役として生きる悲痛を、ほのかな滑稽さに包んで放ち続ける邪鬼が好きです。名も知らぬ石彫りの匠に敬意を!
役者陣の趣深さは、塔上部の欠落を補って余りあります。右隣りには1740(元文5)年の、別の青面金剛の塔もあり、そちらも一見の価値ありです。 (さっくん)
◎所在地/千葉県我孫子市下ケ戸288

















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