2023年11月3日 第697号
松戸から江戸川を越えてすぐのところ。広大な敷地を持つ水元公園。ハナショウブの名所として有名ですが、それだけじゃない。水元公園の魅力をいろいろ紹介!
●メタセコイアの森
中央広場近くに、円錐形でまっすぐ伸びた木の美しい森があります。メタセコイア。なんと化石が先に発見された木なのです。1939年、大阪市立大学の三木茂教授がセコイアに似た植物の化石を発見、メタセコイアと名付けました。既に絶滅したと思われていたのですが、その後、中国で現生種が発見されて日本全国に広まりました。秋に赤褐色に紅葉し、側枝ごと落下するという珍しい針葉樹です。
水元公園には、およそ1500本という都立公園最大規模のメタセコイアが植えられています。昭和46年~47年に植栽された木。当時は5~8メートルと小さかった若木も、現在では20メートルほどの立派な木に成長しました。四季折々に姿を変えるメタセコイアの森。人々が本を読んだり散歩を楽しんだりと思い思いに過ごしています。
●はなしょうぶ園
残念ながら今はハナショウブの時期ではありませんが、こちらの規模も都内最大級。はなしょうぶ園には、約9000平方メートル、16枚の菖蒲田に、約20万本のショウブがあります。ショウブの品種は、江戸時代から積極的につくられてきました。現在では2000種以上あるというのですから驚きです。
水元公園には、堀切小高園と明治神宮から譲り受けた古い江戸系品種を含めた約100品目があるそうです。一口にショウブといっても花弁が3枚、6枚、4~5枚のものの他「八重咲き」、「玉咲き」、「爪咲き」などがあり、花の色も白、ピンク、青、紺、紅紫色など、花弁の文様には、「ぼかし」「筋入り」、「絞り」「覆輪」などいろいろ。公園内には、品種保存園があり、ハナショウブの苗が大切に育てられています。花開く6月上旬から下旬にかけては、周囲のアジサイも咲き、梅雨時の水元公園を彩ります。
●小合溜
「こあいだめ」と読みます。水元公園は、この小合溜に沿って造られた、都内で唯一、水郷の景観が楽しめる公園です。公園から小合溜を眺めると、高いビルもなく、向こう岸の木々と、空が広がっていて、まるで自然の中に旅に来た気分にさせてくれます。
小合溜は、300年ほど前まで江戸川に合流していた古利根川と呼ばれる川でした。江戸時代に、現在の中川にあった亀有溜井を川に戻す代わりに古利根川を締め切り、小合溜井(小合溜)を作ったそうです。公園内には、ここから引いた水路が流れていて、水辺の希少植物を見ることができます。
●水生植物園
水元公園では、ハナショウブをはじめ、スイレンやハスなど多くの水生植物や水辺の植物を見ることができます。とりわけ絶滅が心配される希少植物の保護にも取り組んでいます。アサザはリンドウ科の多年生水草。夏秋の頃、黄色い花をつけてその昔髪飾りにしたそうです。ハナジュンサイとも呼ばれ、若葉は食用となったとか。ガガブタもリンドウ科の多年草の水草。アサザと似ていますが、葉はハート形、花は星形と なんともかわいらしい植物。ミクリはミクリ科の多年草。高さ50~100センチメートルになる茎は直立し、線形の葉は茎より長くなります。集合果がクリのいがに似ているので、実栗なのだそう。タコノアシは、夏に茎の上の方に花軸を出して黄白色の小花を並んでつけるさまがタコの吸盤に似ているので、その名がつけられました。
●ポプラ並木
ポプラもまた、水辺に強い樹木。寒さにも強いヤナギ科の落葉高木で、ヨーロッパ原産。幹は直立、枝も直立の美しい木で、高さは30メートルにもなります。雌雄別株で雌株はあまり見かけないようです。綿毛のついた種は白く、雪のようだといいます。成長が早く、材は柔らかくて弱いので、木材としては使えないのだとか。水元公園のポプラ並木は中央広場をはさんで二か所あり、どちらもメインストリートのようになっています。犬の散歩をする人や、ランニング、ウォーキングを楽しむ人など、多くの人々が行き交います。
●オニバス池
水域の埋め立てや水質の悪化などで激減したオニバスは、環境省の絶滅危惧種に指定されています。都内で自生するのは、水元公園のオニバス池だけだそうです。オニバスはスイレン科の一年生水草。全体的に鋭いとげがあり、葉にはしわが多くて裏側は紫色。葉の直径は、なんと2メートルにもなることがあります。
夏に咲く淡い紫色の花はハスよりも小さく、夜には閉じてしまいます。種子は食べられるのだとか。オニバス池は通常入ることはできません。池の近くにある、水辺の生きもの館では、床に大きなオニバスの葉のイラストが描かれていて、その大きさを体感することができます。館では、その他にも水元公園で見られる植物や動物、昆虫などが展示されていて、かいぼりの様子を上映するなど、公園の自然について触れることができます(入場無料)。
●中央広場
ゆるやかな丘の草地になっているのが中央広場。広さは10ヘクタールもありとにかく広いところです。電線もなく 建物もなく 高い建造物も見えず、ただ見えるのは草と木の緑、そして広い空だけ。秋の空の下、思いっきり体を動かしてみては?
水元公園はいろいろな顔を持っています。池、水路、湿地、菖蒲田、森、並木道、 広場、子どもの遊び場 ドッグランバーベキュー広場、バードサンクチュアリ…。他にも水生植物や湿地の植物の保全、ショウブの苗の育成、工事などで市街地から移植された木の保護や育成なども行っています。広大な敷地の中、あなたの水元公園、探してみて。(ミイ)
※所在地/東京都葛飾区水元公園、東金町五丁目・八丁目、東水元二丁目
※交 通/JR常磐線「金町」、京成金町線「京成金町」から京成バス
(戸ヶ崎操車場または西水元三丁目行き)「水元公園」下車徒歩7分
※駐車場/あり(有料)
※取材協力/水元公園サービスセンター
※参考文献/『樹木図鑑』宮内泰之 監修 成美堂出版
『広辞苑』岩波書店
『百科事典マイペディア』
『木の手帳』岩谷美苗 著東京書籍
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