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子ども食堂 – 支える人たちと支えられる人たち

2024年9月6日 第717号

 子ども食堂は2024年2月末には全国で9132箇所あると発表されています。その数は昨年コロナが5類に移行してから急速に増えており、松戸市内には46箇所の登録があります。その数字が表しているように、子ども食堂の必要性は増しています。
 そこで、需要が高まっている子ども食堂について、それを維持するのに不可欠な食品やスタッフ、更には資金面についてどうなっているのかを調べてみました。

食品はボランティアによって左から右に流れていきます
ボランティアによって仕分けされていきます

 このイラストのように、食品は主に団体や企業、そして家庭(フードドライブ・寄付場所)を通じて、フードバンク(寄付集積所)に集められていきます。松戸市には3か所あるようです。備蓄品で賞味期限が近くなった食品、また企業が販売しなくなった食品等が、大量に寄付されます。
 家庭からは、生協やスーパー、コンビニの店頭、学園祭等のイベント会場に設置されたフードドライブの入れ物等に寄付されます。こちらには多種の食品が寄付されます。贈答品や個人宅の備蓄品で賞味期限が近い物、更には寄付目的で購入されたと思われる食品もあるようです。わざわざ寄付をしに行くのは大変だけれども、手近にあるフードドライブなら簡単だと考えてのことではないかと思われています。
 それらは、ポランティアが回収して、フードバンクに集められます。団体や企業からの寄付は大量ですが、種類は少なめです。一方フードドライブに寄付される量は、それに比べれば少なめですが、種類が多いので、お互いに補完しています。ただ、今はいずれもその総数が減少傾向にあるのは共通しています。社会状況が遠因と思われますが、そういった状況を受けて、ある子ども食堂では、おかずの品数を少なくして対応しているようです。

沢山の保存容器が必要です
これがフードバンクの入れ物です
フードバンクには大型の冷凍庫や棚が沢山設置されていました

 それは流山にあり、個人が駐車場を含めて広い場所と施設を無償で提供しています。そこには、多方面から食品が集められ、ボランティアスタッフが仕分けをし、そして東葛地域の子ども食堂や必要とされる家庭に個別に配送されていきます。大量の食品を一時保存するので、それには大型の設備が必要になります。よって業務用の冷蔵庫や冷凍庫、そして大きな棚や保存容器が沢山設置されています。

 それらの大型設備の購入や維持には、当然資金が必要です。マンパワーはボランティアで解決するとしても、その運営資金が気になりました。そこで、子ども食堂に詳しい、松戸NPO協議会の山崎さんにお尋ねしました。「篤志家による現金の寄付があります。それから行政による各種の支援金制度があるので、それらを申請して運営資金に充当している」ということでした。つまりそれを裏返すと、安定した補助金や資金があるというわけではなさそうです。

 当初、その活動は食事に窮している子どもに食事の提供をして支えていく、というのが目的だったようです。今もそれは変わりませんが、それ以外の働きもしているという側面がありそうなので、松戸駅近くで運営されている子ども食堂「さんまのいえ」で、ボランティアや、参加している大人を中心に感想を尋ねてみました。
 松戸市のボランティア組織「Let’s体験!!」から、中高生4人が、子どもの遊び相手等で参加していました。「自分も幼い頃に子ども食堂に来て楽しかったから、今度はボランティアとして参加している」「将来は管理栄養士になりたいので、その仕事の為に沢山の人たちと接したい」「学校の評価を受けられる場合がある」「年の差に関係なく話ができる」「素の自分でいられる」「笑顔があふれていて楽しませてもらっている」という感想でした。
 ボランティアの60歳男性、「前は仕事としてさんまの家に関わっていたけれど、今はボランティアで手伝っています。子どもと接することで新鮮な発見や学ぶことがあるし、利害関係なく働くことが楽しい」という感想でした。
 また孫や子どもと一緒に参加している方々にも尋ねてみました。「手の皮膚にアレルギーがあるので家事が大変だから」「子どもの育児相談相手になってもらえる」「大家族のような雰囲気が楽しい」「物価高なので、栄養のバランスの取れた食事がありがたい。家だと納豆だけで済ます場合もある」「野菜やお米等の食品をもらって帰るのが助かる」「家と仕事の往復だけだから、ここが息抜きの場になっている」「心身ともに栄養をもらっている」。
 10代後半の男性にも尋ねました。「学生でアルバイトもしているが、シングルの家庭で、兄弟が多く食費がかかるので、食事と食材の提供は助かる」。片道約1時間、バス代を節約して、暑い中徒歩で訪れていました。将来の素敵な夢も語ってくれました。老若男女、国籍を問わず、沢山の人々が集っていて、10畳程のスペースは熱気が溢れていました。

さんまのいえには、沢山の物が置いてありましたが、いずれも寄付による物だそうで、新品のマスク、お下がりの靴下、児童書、漫画本、おもちゃ、ベビーベッド等など。本棚は地域の方がさんまのいえに合うように図面を起こし、材料費のみで施工してくれたものです。そして、食事の準備に汗しているスタッフやその運営をする人たち、多くのボランティアが支えていました。
 ボランティアという言葉は外来語ですが、日本にも昔から『奉仕』という、ちょっぴりかび臭くて、辛そうな感じの言葉があります。つまりそういった志は古くからあったのですが、ボランティアという言葉に変わってから、参加のハードルが下がった感じです。
四国地方には、お遍路さんをもてなすという『おせったい』文化が今もあり、広く知られています。最近の若い人たちの間では『恩送り』という言葉もあるようです。
「Let’s体験!!」のボランティアで来ていた生徒たちは、自らが受けた「恩」を次の世代に送るという恩送りを、既に体現しているようです。今は支えられている人たちは、将来の支える人予備軍のようです。
 子ども食堂は、支える人、支えられる人、みんなが笑顔で集える場所でした。  (まーちゃん)

さんまのいえに新しく取り付けられた本棚と沢山の本
さんまのいえにあるゲーム機やおもちゃ

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