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ふたりの円谷〈つぶらや〉~故郷に残る栄光の足跡②~

2021年7月9日 第641号

ある年齢以上の方にとって、円谷(つぶらや)といえばまずこの2人のことが脳裏をよぎることでしょう。1人は前回の東京オリンピックで陸上競技唯一のメダルを獲得したマラソンランナー円谷幸吉であり、もう1人は、日本映画で特殊撮影の第一人者としての地位を築き、ウルトラマンの生みの親でもある円谷英二です。
 前号(640号)ではマラソンランナー・円谷幸吉の偉業をご紹介しました。今回も同じ須賀川市出身で、特撮の神様、そしてウルトラマンの生みの親でもある円谷英二(本名・英一)の功績をたどることにいたします。

円谷英二編

 

■夢はパイロットからカメラマンへ

9歳の頃、日本で初めて飛行機の公式飛行が成功したニュースを新聞記事で読んだ英二は、大空を飛ぶ夢を抱き始めたといわれています。英二は夢を実現させるために、親の反対を押し切って東京の飛行学校一期生として入学したものの、1人しかいない教官が飛行機事故で亡くなったため、英二の夢はわずか半年で潰えてしまったのです。しかし、英二が18歳の頃、ある映画技師との偶然の出会いが、その後の進路を決定づけたといえるでしょう。映画会社のカメラマンとして働き始めていた円谷の転機となったのは、アメリカ映画「キングコング」を観た時です。この映画に衝撃を受けた円谷は、ここで一気に特撮の世界にのめり込むことになったのです。円谷32歳の時でした。

★円谷が触発された米国映画・キングコング
★円谷が触発された米国映画・キングコング

■日本中を席巻した怪獣映画

 30代半ばで東宝映画に入社したものの時はまさに第二次世界大戦。円谷はその後、しばらく日本陸軍の飛行兵を教育する映画の撮影などにも携わったほか、数々の特撮映画で賞を受賞するなど、特撮技術の第一人者として活躍していました。しかし、戦時中、軍に協力したことで公職追放指定を受けたため、自宅に特殊映画技術研究所を創設。51歳で作品契約として東宝に復帰し、公職追放指定も解除されるに至りました。
そしてついに、あらゆる技術を駆使し、寸暇を惜しんで制作した日本最初の怪獣映画「ゴジラ」が劇場公開されることになりました。円谷、53歳秋のことでした。映画は空前の大ヒット。公開初日には東京都内だけで約10万人が劇場に足を運んだそうです。最終的には約1千万人の来場者を記録し、日本だけではなく海外でも大きな反響を呼んだといわれています。

■ウルトラマンの誕生

ウルトラマンに演技指導する円谷監督

ちょうどこの頃、三種の神器の一つであったテレビが一般家庭に普及し始め、円谷自身も時代は映画からテレビの時代に移行する空気を感じ取っていました。そうして生まれたのが、怪獣と人間との戦いなどを描いたSFドラマ「ウルトラQ」でした。同郷・円谷幸吉が銅メダルを獲った時期に重なります。2年間の時間をかけて制作された「ウルトラQ」は、・円谷プロの命運を賭けた作品だといわれています。1966年1月、「ウルトラQ」の放送が開始されました。放送開始と同時に瞬く間に大きな反響を呼び、世は空前の怪獣ブーム到来です。
 しかし、時代は待ってくれません。早速、次の番組制作が始まります。「子供たちに何か夢を与えられるようなものはないか」…。こうして生まれたのが光の国からやってきたヒーロー「ウルトラマン」でした。最高視聴率は実に43%という驚異的な数字を記録したそうです。人気絶頂のまま、「ウルトラマン」は39回で最終回を迎えます。放送最終日、多くの子供たちが夜空に向かってウルトラマンに別れを告げたといわれています。

■須賀川市に光の町が

須賀川市役所に佇むウルトラの父

「真似はいけない。創造していこうという気持ちが大切」…などの名言を残して円谷は68歳の生涯を閉じました。「少年時代に抱いた夢やあこがれから一歩も外に出ることのできなかった人間だ」と自らを振り返っているように、作品づくりにおいては子供たちに愛と夢を提供することが一番大切だと考えていたのでしょう。須賀川市では国民に最も愛されてきたキャラクターであるウルトラマンの影響力を駆使して地元の魅力を発信し、全国の人々との交流を図ることを目的に、2013年、「M78星雲 光の国」との間に姉妹都市の提携を結びました。仮想都市「すかがわ市 M78 光の町」の誕生です。町長には宇宙警備隊大隊長ウルトラの父が就任。仮想都市に住民登録すれば、住民票も発行(有料)してもらえます。
現在では市役所、駅、空港をはじめ市内のメイ
ンストリート(松明通り)には、写真のようにウルトラマンや怪獣たちの像が設置され、光の町を彩っています。円谷の功績を後世に伝承する試みはさらに続きます。2019年1月には、須賀川市民交流センター(tette)内に「円谷英二ミュージアム」がオープン。
特殊メイキング映像や造形物、関連書籍の展示物などを通じて円谷が残した偉業に触れることができます。

エレキング
古代怪獣ゴモラ
ウルトラマン 松明通り

■ふたりの円谷は 永遠に

陸上競技と映画の世界、たとえジャンルは異なっていても、2人の残した功績は我々の記憶の中で生き続け、故郷の須賀川市では2人の残した栄光と遺産の数々が継承されています。このほか、同市には、見どころや歴史的な伝統行事がたくさんあります。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いた時には是非、観光も兼ねて2人の偉業を訪ねてみてください。(ルビイ)

▶写真提供(★印以外)/・円谷プロ
◎参考資料/須賀川市観光物産振興協会HP
コミック版世界の伝記 円谷英二(ポプラ社)

●花の町・須賀川 見どころいっぱい

ここ須賀川市は花の町としても有名です。日本で唯一、国指定名勝に登録されている「牡丹園」。約290種、7000株のボタンが優雅に咲き誇る姿は圧巻で、秋は園内の紅葉も見事だそうです。また、420年以上の伝統を誇る「松明あかし」も見逃せません。伊達政宗率いる軍が須賀川城を攻め落とした合戦で命を落とした兵の霊を弔うために始められたといわれていますが、勇壮な戦国絵巻を見ているような迫力だそうです。
▶写真提供/須賀川市観光物産振興協会

須賀川牡丹園
松明あかし

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