特集記事

つくばサイエンスツアー

2021年3月12日 第633号

つくば科学万博の開催からすでに36年。多くの研究機関が集結したつくば市は、2005年につくばエクスプレス(TX)が開通したことで、松戸や柏など東葛地区からでも一時間圏内と、大変身近なエリアになりました。今回は、研究学園都市に点在する国の研究施設のうち、代表的な施設を循環するサイエンスツアーバスで見学した体験をもとに、各展示施設のみどころや魅力をお伝えします。

■サイエンスツアーバス

 マイカーで各施設を回ることも可能ですが、今回はつくば駅バスターミナルから発着しているサイエンスツアーバスを利用しました。このツアーバスは土・日・祝日のみ運行する路線バスで一日乗り降り自由の循環バスです。運賃は大人(中学生以上)500円、小学生250円(幼児無料)です。通常ですと、毎月第1・第3土曜日だけは専門スタッフによるガイド同行コース(運賃は同じですが要予約)もありますが、現在は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する意味から、ガイドの同行は中止されています。
 筆者が訪れたのは12月初旬でした。終点つくば駅で下車し、駅前ロータリーの南側8番乗り場の脇にチケット発売所があります。1階の受付で「サイエンスツアーの乗り放題切符」と言えば、一日乗車券のほか、各施設を紹介したパンフレット、駅周辺の飲食店で利用可能なクーポンをいただけます。
 今回は9時15分発の北回りバスに乗り込み、午前中は、「地図と測量の科学館」(国土地理院)と「筑波実験植物園」(国立科学博物館)を見て回ることにしました。

サイエンスツアーバス

■地図と測量の科学館バス

国土地理院といえば、皆さんご存知のように、日本国内の測量を行って正確な位置を定め、地図を作るのが大きな役割です。展示館の入口を入ると、ひときわ大きな日本地図が来場者を驚かせます。「日本列島空中散歩マップ」。赤青のメガネをかけて日本列島全体を眺めると、上空から見た様子が擬似体験できます。しかも立体画像として見えるので、日本列島がいかに平地が少なく、急峻な山に覆われているかが実感できますよ。自分たちが住んでいる日本列島の真の姿を知るにはうってつけだと思います。
 また、外の「地球ひろば」には、直径22mの日本列島球体模型があって、その上を歩けば高度300㎞から眺めた時と同じように地球の丸さを体感できます。そのほか、館内には古地図や現存する世界最古の地球儀も展示されており、地理ゲームを楽しめるコーナーなどもあって、大人から子供まで興味深く見学することができるはずです。(予約不要・入館料無料。ただし、団体(15名以上)での利用は事前申込みが必要)※写真★印は、国土地理院・地図と測量の科学館提供)

★日本列島空中散歩マップ
★直径22mの日本列島球体模型
世界最古の地球儀

■筑波実験植物園

 次に訪れたのは、植物の研究を推進するために設置された国立科学博物館が管理している施設です。14ヘクタールにおよぶ敷地に日本をはじめ世界の熱帯・乾燥地帯に生育する植物など約3千種類を見ることができます。当日は新型コロナウイルスの影響で見学不可の施設もあったほか、生憎の空模様で全てを見学できなかったことが悔やまれます。温室以外はすべて屋外ですので、早春から晩秋までが最適かもしれません。ただし、園内は相当な広さです。筆者が一番気に入ったのは、熱帯雨林温室です。日本では見かけない巨大な葉をもった植物、樹木のように背の高い植物など、その威容に圧倒されました。サバンナ温室にある大きなサボテンにも出会えて、植物大好き人間にはたまらない空間だと思います。世界各地の気候に適合した植物の姿形…。生命の不思議さを実感できますよ。(予約不要・入館料は一般・大学生310円、高校生以下、65歳以上無料)
 このあと、ツアーバスでつくば駅のバスターミナルまで戻り、午後の便まで1時間ほどあるため、近隣のビル内でお昼ご飯を食べるのがいいでしょう。お店は沢山ありますので昼食難民になる心配はありません。

熱帯の植物
大きさも形も様々なサボテン

■つくばエキスポセンター

 午後最初の見学先であるエキスポセンターは、1985年のつくば万博の開催を記念する恒久施設として建設されました。当センターの目玉は、親子で一緒になってゲーム感覚で科学の不思議を体験できるサイエンスゾーンや季節ごとの星空を鑑賞できる世界最大級の規模を誇るプラネタリウムでしょう。
 筆者はこの日、バスの時間の関係でプラネタリウムの鑑賞は見送りましたが、見学する施設を選択してスケジュールを組んでみることをお薦めします。また、エキスポセンターでは宇宙、海洋分野の科学技術に関する展示や、サイエンスショー、科学教室なども不定期で開催されていますので、事前に実施日を確認して出かけるとよいでしょう。(予約不要・入館料大人500円、子供250円、3歳以下無料。プラネタリウムは別途)※プラネタリウムの写真は、(公財)つくば科学万博記念財団提供。

人気のあるプラネタリウム
高性能電気自動車KAZ(つくばエキスポセンター)

■サイエンス・スクエアつくばポセンター

 次に訪れたのは産業技術研究所の最先端の技術成果を展示しているショールーム的施設です。私たちの未来の暮らしを変える可能性を秘めた技術に触れることができま
す。1階のイノベーションゾーンでは、介護・家事などを人間に代わって生活支援するロボット、脳波で難病患者の意思伝達を支援する「ニューロコミュニケーター」、魚の鮮度を保つため、海水を利用して船上で速やかに冷却できる「海水シャーベット氷」等々。暮らしに密着した技術開発の現状に触れることができます。ただし、小さなお子さんなら、触って体験できるアザラシ型ロボット「パロ」に興味が沸くかもしれませんが、総じて難しい内容が多くお子さんにはハードルが高いと思います。(予約不要・入館料無料)

■地質標本館

 サイエンス・スクエアつくばから徒歩2分位の場所にある地質標本館は、ユニークな地球科学専門の博物館で、日本の地質、地下資源、海洋の地質などの研究成果が展示されています。みどころは、日本列島の立体地質図や、北海道で発見されたデスモスチルスの化石。ほかにも日本や世界各地の美しい岩石や鉱物、アンモナイトなどの化石標本約2万点が展示されています。植物の多様性同様、太古からの地球の地殻変動によって生成された地質形成のメカニズムには改めて大自然の神秘を感じます。(現在は要予約・入館料無料)
 時間はすでに15時45分、本来であれば次は筑波宇宙センターに行くスケジュールですが、生憎、展示施設の性質上、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため宇宙センターの見学はできませんでした。感染の収束が見えない中、他の展示施設の見学の可否およびツアーバスの運行状況に関しては、その都度、枠内の連絡先で確認してみてください。
 最後に全体的な感想を少し。今回は筆者一人で朝から夕方まで全部で5カ所の展示館を回りました。一施設の滞在時間は約1時間。お子様連れの場合は、午前中に「地図と測量の科学館」と「筑波実験植物園」、そして午後は「つくばエキスポセンター」だけにして、その代わりプラネタリウムの鑑賞を必ず組み込んだ方が子供たちは喜ぶはずです。東葛地区から身近な場所にある興味深い施設の数々。学校の自由研究テーマのヒントもたくさんありますよ。皆さんも是非一度、サイエンスシテイつくばに足を運んで、ちょっぴり知的な一日を体験してみてはいかがでしょうか。
(ルビイ)

H2ロケット実物大模型(つくばエキスポセンター)

◎つくばサイエンスツアーオフィス
TEL029-863-6868
平日9~17時

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